聖路加国際病院精神腫瘍科の保坂隆先生と、乳がんステージ4患者でコピーライターの今渕恵子さんの共著「がんでも長生き心のメソッド」を読みました。
今までに読んだがんに関する本、生き方に関する本の中で一番良かったです。

- 作者: 今渕恵子,保坂隆
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2016/01/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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保坂隆先生の勤める「精神腫瘍科」とは、英語ではサイコオンコロジーと言い、がん患者や家族のための心・精神のケアを目的としています。わたしは、ちょうど抗がん剤治療中に講演を聞く機会があり、とても支えになりました。
そんな保坂先生の出される本ということで、発売前から気になっていました。が、正直にいうと「長生き」という言葉が引っかかり、なかなか手に取れませんでした。がんで多くの人が死ぬ時代は終わったと思っているし、きちんと治療をして長く生きていく覚悟があるから、「がんでも長生き」という表現に過敏になっていたのだと思います。
その後、(ホルモン治療は続いているけれど)通院の多い治療は落ち着き、仕事にも完全に復帰し、日常生活が戻ってきました。自分自身と向き合えるようになったので、勇気を出して読みました。
どんなひとに読んでほしいか
大きな病気を告知されて、一瞬でも「死」が脳裏をよぎった、すべての患者さんとその家族に読んでほしいです。タイトルは「がんでも」と書かれていますが、内容は、がん以外の病気や怪我、障害をお持ちの方にも活かせるものだと思います。
「死」というと、患者としては最悪の状況だし、絶対に迎えたくないものです。しかし、病気でなくても、必ず人間は死にます。そういう当たり前のことと、患者の生きたいという気持ちと、病気との向き合い方が、保坂先生と今渕さんの対談形式でわかりやすく書かれています。
わたしは「死」に関するものを、しばらく遠ざけていましたが、この本は納得ながら明るく読めました。
どんなときに読んでほしいか
告知から少し時間が経って、精神的に落ち着いてきたタイミング、病気と向き合えるようになってきた頃に読むと、心がすっと軽くなると思います。家族が病気で苦しんでいるときに読んでも良いかもしれません。
保坂先生も今渕さんも、良い意味でドライなので、がん治療でよく見かける「心の弱みにつけ込まれそうなスピリチュアルさ」が全くなく、安心して読めます。
といっても、スピリチュアルな内容が全くないわけではなく、人生と死を受け入れるための考え方は載っています。
スピリチュアリティがあったほうが、良い死を迎えやすいという図。
どんな内容か
がんとはどんな病気で、どんな治療をするか。そのとき、どんな心の動きがあるか。そして、どうすればそのストレスを発散できるか。ということが順を追って、ていねいに書かれています。
中でも気に入っているのは「がんは新しい人生を始めるチャンス」という考え方です。
先生、どうしたことでしょうか。死を迎える準備を整えていたつもりが、いつの間にか、残りの人生をよりよく生きるための準備にすり替わってきているんです。
わたしも、がんをきっかけとして、より良い人生を送っていきたいと思います。

- 作者: 今渕恵子,保坂隆
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2016/01/28
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